鳥取地裁「児童手当返還請求訴訟」判決  歴史的・画期的勝利

 2013年4月14日付 鳥取民報

 

 税金の滞納を理由に鳥取県が、預金化された児童手当を差し押さえたのは違法だとして、鳥取市の自営業の男性(40)が県を相手取り、処分の取り消しと返還・損害賠償を求めた訴訟の判決が3月29日、鳥取地裁(和久田斉裁判長)でありました。
 判決は差し押さえを違法と認め、「子を持つ父親として多大な精神的苦痛を被った」として児童手当13万円と預金73円、慰謝料20万円と弁護士費用5万円の支払いを命じました。
 児童手当は、児童手当法で差し押さえ禁止債券とされていますが、最高裁は、一般的な預金債権になった時点で児童手当の属性を承継せず(識別できる場合は承継)、差し押さえが許されるとの見解を示しています。
 判決で和久田裁判長は、児童手当を原資として徴税することを意図し、預金口座に児童手当以外に入金がないことを知っていたか、知りうる状態にあったのに、差し押さえを断行した場合は「児童手当法の精神を無視するような裁量逸脱で、違法と解する」と判断。
 訴訟では、県が「差し押さえ時点では、児童手当であるとは認識していなかった(差し押さえ当日、男性が児童手当であるとして返還を求めた)」などと主張。県が預金を児童手当だと認識していたか、預金が児童手当として識別できる状況にあったかどうかが争点となりました。
 和久田裁判長は、県職員が預金調査で〝本件口座に児童手当が振り込まれることと振り込まれる日時〟を把握したうえで時期を合わせ、預金口座の取引履歴(振り込まれたこと)を確認して、差し押さえを実施したと認定しました。
 「勝訴」「鳥取県の違法を認定」の垂れ幕が掲げられると、支援者らが待つ鳥取地裁前は、いっせいに拍手と歓声に包まれました。
 勝訴判決に男性(40)は「とてもよい判決で、うれしい。口座にいったん入ったら差し押さえできるとして、行政側は当たり前のように差し押さえてきた。(同様の事例で)全国にいい影響が出ることを心から望んでいる」と話しました。
 国会でもこの問題を取り上げて追及した前参院議員の仁比そうへい氏は「今回の判決は、県の違法な徴税を断罪しました。知事には、判決の重みを受けとめ、原告に児童手当を返し、慰謝料を払うことを強く求めたい。
 原告が、商売道具の車の差し押さえを解消できないほど、生活が困窮していたことを、県は認識していたからこそ、公的給付の児童手当を原資にした預金を差し押さえることを決めて、実施したと裁判所は認定した。
 歴史的・画期的な勝利判決を、全国でおこなわれている商売つぶしの税務行政を大きく変えるたたかいの出発点にしましょう」とあいさつしました。