鳥取市の「市庁舎新築移転を問う市民の会」は12日、成蹊大学法科大学院の武田真一郎教授を招いて住民投票についての講演会を開き約250人が参加しました。
八村輝夫会長代行は、昨年5月、市庁舎の「新築移転」か「耐震改修」かの二者択一で住民投票が実施され、投票率50・8%で「耐震改修」が60・6%を占めたことを紹介。「市民が新築移転反対の意思を示した」と強調しました。
ところがそれに反して、竹内功市長が今年6月、「投票結果を尊重する」との自身の表明を翻し、「新築移転」を柱とする「基本方針案」を発表したため、「市民の会」として「基本方針案」に基づく全ての作業の中止を求める請願書を市議会に提出したことを報告しました。
武田教授は講演で、ほとんどの住民投票が市町村合併にかかわってのものであり、重要争点型は20件余りと少ないと指摘。重要争点型の住民投票で投票結果と異なる決定がなされたのは、宮崎県小林市の「産廃処理施設建設」の1件で、反対が59・4%だったが、①施設がほぼ完成していた②施設設置の許可権限が知事にあり、廃棄物処理法上の要件を満たしていれば許可せざるをえない(条例より法が優先)―ためにやむをえなかったとのべました。
武田教授は、徳島の吉野川可動堰の住民投票にかかわった経験を語り、鳥取市庁舎住民投票の結果について、投票率が50%を超え、「耐震改修」が6割を占め「新築移転」を大きく上回っており、「住民の生の意見が示された。民主的正当性も市長・議会の尊重義務の程度も高い」と評価しました。
つづけて「市長は市民の意見を聞き、実現することが仕事であり、市長には非常に大きな政治的責任がある。市民の意見とちがうことをすることは、政治的に許されない。重要政策を問う住民投票で投票結果が公然と無視されるケースは、事実上今回が初めてとなる」と批判しました。
市長が住民投票結果と異なる政策を決定する場合は、説明責任が問われるが、「市民意識調査」や「調査特別委員会」、「専門家委員会」の結果より、公式な住民投票の結果が優先するのは当然であり、市長の説明には正当な理由がなく説明責任を果たしていないと糾弾しました。
また、耐震改修費が投票時の20億円から43億円になったのは説得力のある説明がなく、なぜ投票前に示さなかったのかの疑問が残り、情報操作の疑いもあるとのべました。
解決策として、市長が辞職するか、来年4月の市長選挙まで市庁舎整備を凍結して、市長選で信を問うことを提案しました。
市長の姿勢をたださない議会についても、「間接民主制(議会)の機能を補完するのが、直接民主主義の住民投票だが、機能が回復しないのは、そうとう酷い機能不全だ」と批判しました。