【2月23日付】鳥取県革新懇が代表世話人会  規模拡大ではTPPで競争できない

 小林教授は、TPPの農業への影響について、政府試算で農林水産物生産額が42%(3兆円)減、生産量米が32%減、牛肉と豚肉が7割減、砂糖が壊滅、鳥取県試算で生産額が半減、米が49%減、牛肉が58%減、豚肉が78%減、牛乳が壊滅すると紹介しました。
 次に自民党による新農業政策について解説しました。
 ①農地を集積し8割を担い手に集中②生産対策・生産コスト低減対策(担い手の米生産コスト4割削減)③多様な担い手の育成・確保④食文化・食産業のグローバル展開(FBI)戦略による輸出拡大⑤新たな国内ニーズへの対応⑥六次産業化の推進⑦地域資源を活かす再生可能エネルギーの活用…⑫林業の成長産業化⑬水産日本の復活―の重点項目を上げました。
 担い手(生産法人や認定農業者、認定就農者など)に農地の8割を集中し、米の生産コスト(全国平均60㌔当たり1万6千円)を10年で4割削減するなどの厳しい目標を掲げているが、現在60㌔当たり9600円を達成している農地はないと指摘しました。
 新しい担い手の育成は、新規就農者を年に2万人迎え、40代の基幹的担い手を40万人に増やす目標も厳しいとのべました。
 グローバル展開で輸出を拡大し1兆円(加工食品5千億円、水産物500億円、コメ・コメ加工品600億円など)にして、六次産業化で2020年までに10兆円にするなどとんでもない計画だと指摘しました。
 農家が加工食品の生産・販売・マーケティング・流通業者になって、日清、カゴメ、キューピーなどの食品大手メーカーとたたかえるかと疑問を呈しました。
 コメの直接支払交付金は、生産調整に10㌃当たり1万5千円出しているのを7500円にして、30年にはなくす。代わりに、日本型直接支払制度で中山間地の農地維持、資源向上に支払いを実施。水田フル活用ビジョンで飼料用米・米粉用米に10㌃当たり上限10万5千円を支払い、麦、大豆などに助成することを紹介しました。
 TPPに加盟した場合、輸入価格とのギャップを補てんするために農家への多額の補助金が生じるが、生産調整をやめて政策を担い手に集中し、農家の多数を占める小規模農家を政策の対象外にすれば(結果として離農するか販売をやめることになる)、大幅な補助金の削減ができるためだとのべました。
 自民党のTPPに対する公約違反について言及しました。
 12年12月の総選挙で「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する、農林水産物重要5品目や国民皆保険などの聖域が確保できなければ撤退も辞さない、13年参院選挙で「守るべきものは守る」と言いながら、TPP交渉に参加し、農産物重要5項目が関税撤廃の圧力にさらされても、譲歩の姿勢は見せるが撤退には言及しないと批判しました。
 コメの生産コストについて「規模を拡大すれば下げることができるというが、そうではない」として、統計資料に基づいて説明しました。
 現状でも「3㌶以下の小規模農家は赤字」であり、「20㌶の農家は1200万円の収益があっても、3~4人が働いており、一人当たりの収入は少ない」うえに、「コメ、麦、大豆に対する補助金は経費に消えている。補助金が減らされるとやっていけなくなる」、また「経営規模が大きくなるほど、農地が分散し非効率になっている」と指摘し、3㌶以下は政策の対象外になり、経営が成り立たなくなるとのべました。
 逆にカリフォルニアでは、一筆が20㌶と大きく、飛行機で直播し、大型トラクターで収穫して日本並に獲れるので、「日本は米国の8・3倍のコストになり、中国の12~13倍のコストになる」と強調しました。