鳥取県革新懇は1月25日、北栄町で代表世話人会を開き、鳥取大学の小林一教授が「TPP(環太平洋連携協定)、自民党の新農業政策と農業・農村」と題して講演しました。
小林教授は、日本の農業・農村の振興、地域と国民の暮らしを守る観点とTPP加盟とは、相容れないものであり、アベノミクスの新成長戦略に沿って打ち出された新農業政策の陰にTPPが見えると指摘しました。
TPPは、「例外なき関税化」を前提として、交渉は秘密主義で進められ、情報提供が極めて乏しいと特徴づけました。
TPP交渉は難航し、貿易円滑化、衛生植物検疫は順調だが、物品市場アクセス(日米間の農業や自動車)、知的財産権、国有企業は米国と日本、新興国等の間で大きな軋轢があるとのべました。
米国主導で進められているが、米国は今年11月の中間選挙をにらみ、今年春が妥結のリミットと考えており、妥結できなければ交渉が大幅に延びる可能性を強調しました。
知的財産権の分野では、新興国が薬価の高い新薬に対して安価なジェネリック薬品が使えなくなると抵抗し、国有企業の優遇措置廃止では、ベトナムが抵抗し、日米間では農産物重要5項目と自動車の関税撤廃で両国が抵抗しているとのべましした。
日本は、TPP交渉参加の条件作りのために米国に一方的に譲歩し、BSEの輸入牛肉検査基準の緩和(30カ月齢以下は検査しない)、かんぽ生命のがん保険販売凍結・アフラックの販売、軽自動車の税率を引き上げたうえ、重要5項目の全586品目は守れなくなっていると指摘しました。
また、米国で2012年にBSE(非定形)が見つかったことを紹介しました。
(非定形BSEは、原因が不明で感染性も病原性も強いとされる。厚労省によれば「非定形BSEは8歳以上の高齢牛で発生し、頻度は非常に稀。日本で見つかった23カ月齢の非定形BSEは、マウスによる脳内接種で感染性しなかった。よって高齢牛以外の非定形BSEのリスクは無視できる」)。
日本はTPP交渉中の12国の内、米国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドを除く7カ国とFTAかEPAを締結していると指摘。アジア太平洋地域では、TPPの他にも経済連携がすすめられており、日本のGDPを押し上げる効果は、TPP0・54%に対して日中韓FTA0・74%、RCEP(アセアン+日・中・韓・印・豪・NG)1・10%があり、TPPの経済効果は高くないが、10年後に3・2兆円の経済効果は、米国の自動車輸入関税維持で計算が狂うとのべました。
日米政府がTPPを推し進める背景を説明しました。
日本について、①WTO発足以降、貿易額は大幅増加したが、貿易収支は増加せず、GDPの伸びが停滞している②経常収支は順調だが長期債務残高が対GDP比で先進国最悪の1000兆円になる③資本の海外流出がつづき、生産拠点の海外移転がすすみ、国内の産業、雇用、内需が停滞している―を上げました。
米国について、①GDPは成長しても、経済は輸入に依存し、貿易収支、経常収支とも毎年大幅赤字で日本よりはるかに深刻②長期債務残高がGDP水準まで拡大③対日貿易が縮小、経済不況からの脱出を輸出に求める―を上げました。
さらに、日本について①輸出は伸びても貿易収支は赤字になる②経常収支(貿易収支、所得収支など)を増そうとして貿易量を増しても大きく黒字にする状況にない③日本製品を海外で生産するため、国内で消費する輸入は増えても輸出が増えないという構造的問題があるとのべました。(つづく)