鳥取県のアースデイnight実行委員会やずずは4月25日、鳥取市で環境講演会を開きました。文化人類学者で明治学院大学教授の辻信一氏が講演し、持続可能な社会にするためには「小さく、ゆっくり、簡素に(スモール、スロー、シンプル)」が大事だと強調しました。
辻氏は、現代社会は「より大きく、より早く、より多く」が目的となって経済成長(効率)至上主義に陥り、科学技術が人間の手を離れて暴走し、気候変動(地球温暖化)などの環境破壊、種の絶滅、資源の枯渇、社会の非人間化が進行し、その中で3・11の福島原発事故が起こったと指摘。
自然界は、過ぎることがなく、成長を止めるすべを知っているとのべ、自然の中にある人間も科学技術を制御し、適正でちょうどいいサイズ、スピード、量を実現しなければ、人類は危機を解決できないと訴えました。
小ささは「顔の見える関係・範囲で優しさが発揮できる規模」、遅さは「相手を大切にできて自分のよさを発揮できる速度で時間をかける」、少なさは「(過剰な生産と消費のため)生活に追われず、詰め込まず、自分の時間と自由を失わない量」だとして、競争教育、人間無視のコストカット、過剰な生産・消費で成り立つ経済の転換を呼びかけました。
日本は、経済効率のために子どもにお金をかけず、少人数学校を統合して大規模化し、教員の数を減らし、子どもに注ぐ愛を削り、学びや遊びから自由を奪っていると指摘。
「人間は愛なしで生きられない(ルーマニアのチャウシェスク大統領が、労働力を増やして国の生産力をあげるために、子ども4人以下の家庭に課税し、親が面倒をみられない子どもたちを愛のない国の施設に入れたが、多くの子どもが愛着障害を負ったり亡くなったりした)」「学ぶのは、人生を豊かにするためであり、競争によって強いられるものではない。自由のない『学び』は学びではない」と強調しました。
人間は、人間以外の生物、家畜や作物にも「より大きく、より早く、より多く育て」と薬を使い、閉じ込めてロボットのように管理し、生産性をあげることを強いているとのべ、生物も「自分の生きる時間を奪われている」と告発しました。