「美しい中海を守る住民会議」は13日、米子市で中海再生の学習会を開きました。
同会議の門脇英隆代表は、中海再生のために①堤防開削などで反時計回りの流れを取り戻す②浚渫くぼ地の埋め戻し③浅場の造成―などを求めて活動をしていると報告しました。
漁師歴71年の中島栄さんのインタビュービデオを上映。県水産試験場の藤原大吾さんが、中海の魚貝類の実態を報告し、広島大学の山本民次教授・農学博士が講演しました。
中島氏はビデオの中で、かつての中海を「魚やタイが湧いていた」と表現。淡水化の堤防で赤貝、本庄エビが獲れなくなり、一時期獲れたヒラメやメバルもいなくなり、今は水質悪化で獲れるのはゴンズイや赤エイで、森山堤防1カ所の開削では改善されていないとのべ、5カ所以上の開削を求めました。
藤原氏は、ハイビーズ(石炭灰造粒物)を用いて内浜で浅場を造成し、海藻を生息させ、アサリを養殖するが育たないと報告。「貧酸素塊が湖底にあり、南風(中海から陸へ)では浅場の溶存酸素濃度は下がらないが、北風(陸から中海へ)では大幅に下がる」として、「表層が中海の中心部へ移動すると底の貧酸素塊がせり上がってアサリが死滅する」と推測しました。
藻場では初夏にハゼの稚魚(5㌢程度)が多く観察されるが、8月になると成長したハゼは見られなくなると報告。現在、湯梨浜町の試験場で井戸海水を用いて畜養し、商品化をめざしているとして、「サイズをそろえて共食いを避けたところ、現在の生残率は75%。18㌢まで育ち、肉厚のために刺身で食べると美味しいと好評だ」と紹介しました。
山本教授は「汽水域では底に沈みこむ海水に含まれる硫酸イオンが、菌が有機物を分解(酸化)するときに還元されて硫化水素が発生する。硫化水素は酸化して酸素を消費するため、溶存酸素濃度が低下する」と指摘。くぼ地に有機物が溜まって硫化水素を発生させるが、ハイビーズで埋め戻すことで硫化水素を吸着できるとして、実験データを示しました。
無機の窒素やリンなどは、植物プランクトンの栄養となるため、下水の高度処理は控え、窒素/リン比(=16)に気を付けて減らし過ぎないようにして、浚渫くぼ地をハイビーズなどで埋め戻して硫化水素の発生を抑え、浅場を造成して(湖底から表層に)栄養塩が循環するようにして植物プランクトンを増やし、魚貝類が育つようにすることが大事だと指摘しました。
乾泥中の硫化物の水産用水基準は、1グラム当たり0・2㍉㌘以下だが、瀬戸内海は半分しか基準を満たさず、中海は全体が満たさないとのべ、中海全体の物質循環を定量化し、施策の科学的評価をすることが科学者の仕事だとのべました。