【12月18日付】農業団体や野党が米子市でTPP反対集会-命や環境より企業の利益優先やめよ

 TPP(環太平洋連携協定)・農協「改革」に反対する鳥取県西部総決起集会が10日、米子市のJA鳥取西部で開かれ、約230人が参加しました。全日農県連会長で県畜産農協組合長の鎌谷一也氏が実行委員長、日本共産党の錦織陽子県議が副実行委員長、民進党の森雅幹県議が事務局長を務めました。


 鈴木宣弘東京大学教授が基調講演し、鎌谷氏、大山乳業農協の幅田信一郎組合長、JA鳥取西部の植田秋博専務、農業法人の長谷川正社長、県保険医協会の小田島耕郎事務局長、新日本婦人の会境港支部の小村真利子支部長が発言しました。


 政党を代表して日本共産党の福住ひでゆき衆院2区候補、民進党県連の湯原俊二副代表・元衆院議員、社民党県連の松本煕副代表が登壇し、湯原氏が決意表明しました。


 鈴木教授は、安倍政権のTPP批准はTPPの水準を国際公約するもので、米国やEUとの協議でそれを超える譲歩を迫られると警告しました。


 現状でも日本で禁止されている収穫後農薬、遺伝子組み換え食品、成長ホルモン使用牛肉・乳製品が輸入されており、TPPや二国間交渉で大幅に規制緩和されるとして、「米国は〝科学主義〟を振りかざし、安全でないことを証明できないものは、国際基準を飲まされる。人の命や環境より企業の利益が優先される。安い輸入農産物で健康を害しては、かえって高くつく。消費者として地元の農産物を買って農家を支え、安全、安心な日本の農産物と農業を守ろう」と呼びかけました。


 米国のコメは60㌔につき8000円の補助金を出して4000円で打っているとのべ、農家所得に占める補助金の割合は、仏、英が90%、スイスは100%だと紹介しました。


 日本の農業は、2005年は15・6%で今は4割弱だとのべ、日本の農産物市場は20年間で40兆円から80兆円に拡大したが、生産者の取り分は3割から1割に減ったと指摘。「西欧諸国は命や環境を支える産業を国民全体で支えるのは当たり前だと考えて、税金で支えている。日本の農業は過保護ではない。カナダ国民は、危険な成長ホルモン使用の米国産牛乳を飲まなくてすむとして、1㍑300円の国産牛乳を買っている」と話しました。


 農協「改革」について「米国は郵政の次ぎに農協マネー150億円を狙っている。共同販売、共同購入をやめさせ、相互扶助の協同組合をやめさせ、資材を高く売りつけ、農産物を安く買いたたきたい。農協をつぶすまで攻撃をやめない」として、徹底抗戦を呼びかけました。

鎌谷畜産農協組合長
農協「改革」に抗し稲作と畜産守ろう

 鎌谷氏は、TPPの外圧をテコにして規制緩和をすすめ、農協をつぶし兼業農家をつぶし、農地を企業に売り渡し、農村を収奪する大きな流れが始まっていると警告しました。


 「1㌔60円の外米に1㌔200円の国産米は太刀打ちできない。(関税撤廃で)国産米の生産が成り立たなくなる」と指摘。米の生産調整をやめて米価を暴落させれば、農地の地価が下がり、兼業農家が土地を手放し、多国籍企業や金融資本が農地を取得し、中山間地は耕作放棄地になるとのべ、TPP発効阻止、生産調整の維持、個別所得補償制度の復活、農協「改革」(農産物の委託販売を全量買い取りに、信用事業を営むJAを3年で半減になど)反対を訴えました。


 鎌氏は畜産について、先の見通しがないために牛肥育農家が次々とやめており、和牛もホルスタインも頭数が減っているとのべました。


 マルキンは、肉用牛肥育経営の収益が悪化した場合に生産コストと粗利益の差額の8割を補てんする制度。子牛1頭40万円で2万5000円の所得があったのが、34万円に下落すれば、マルキンから出ても赤字になると説明しました。


 畜産と稲作との関係について、県畜産農協の作付面積は、牧草1000㌶、飼料用トウモロコシ1000㌶、飼料用米・稲1400㌶で自給飼料を生産しており、畜産がなくなれば地域の水田や山が守れなくなると指摘しました。


 JA鳥取西部の植田専務は、ファーマーズマーケット「アスパル」の利用会員が3万人に達したことなどに感謝し、TPP反対のたたかいを紹介。米国が仮に批准してしまえば、TPPが発効してしまうと危機感を表明しました。農協の手数料は資材の販売で7%、農産物で3%にすぎないと指摘しました。


 保険医協会の小田島事務局長は、高い薬価で日本の国民皆保険が破綻する危険を指摘。「日本の薬価平均は英、仏の2倍と高いが米国は日本の1・3倍する。米国は米国製薬会社が日本の薬価決定に干渉するしくみを求めている。TPPで薬の特許期間が長くなれば、高い薬価が続き、後発医薬品が使えなくなり、紛争地域や貧困国の子どもたちが亡くなる」と訴えました。