鳥取県の東部春闘懇談会と西部春闘懇共闘会議は1月28日、神戸学院大学の上脇博之教授(憲法学)を招いて倉吉市で憲法講演会を開き、40人が参加しました。
上脇氏は、自民党の改憲案は国家の都合で基本的人権を制限し、国民主権、自由と権利の保障、権力の制限という近代憲法の原理を欠くと指摘。一方、日本国憲法は、経済的弱者の人権を保障するための社会権(労働権、生存権、教育を受ける権利など)が盛り込まれた現代憲法で、9条に基づく平和的生存権などすぐれた憲法だと評価しました。
さらに、日本国憲法の意義、果たした役割について、明治憲法が家父長的な家制度で、戸主に家族の支配権を与えて、個人より家、女より男、子より親を重視したため、個人の尊厳、婚姻の自由、両性の平等など、基本的人権、民主主義を実現するために、家制度を解体する必要があったとのべました。
「押し付け憲法論」に対して、日本国憲法はポツダム宣言を受諾(国際条約の締結)した日本政府に起草する責任があったと指摘。ポツダム宣言は、軍の武装解除、民主主義の復活強化、基本的人権の確立、軍事産業の否認などを盛り込み、国民主権、基本的人権、恒久平和主義の枠組みをもった憲法の起草を要請したと解説しました。
自民党の改憲案は、前文から政府の行為による戦争、平和的生存権を削除、9条から戦力不保持、交戦権否認を削除して、集団的自衛権を含む自衛権、国防軍の保持、「国際平和活動」、公の秩序の維持、国防への国民の協力、軍法会議を挿入していると指摘。93条では、地方自治体の権限を道州など広域地方自治体に移し、県市町村の権限を奪い、沖縄のような抵抗ができなくなるとのべました。
緊急事態条項では国会を通さずに法律と同等の政令がつくれ、国政選挙もせずに独裁体制を敷くことが可能となると警告しました。
「そもそも憲法は(権力の乱用や経済格差から)基本的人権を守るためのものだ」として、自民党が削除した日本国憲法97条は、憲法の最高法規としての地位が、現在及び将来に渡って基本的人権を保障していることで保障されていると宣言するもので、97条を削除すると最高法規としての根拠がなくなるとのべました。
「公共の福祉」は人権の衝突を調整する原理(他者の人権によって制限される内在的制限)だが、改憲案では「公益」「公の秩序」にとって代わり、国家が人権を制限できるようになると批判。改憲案の家族の助け合い義務(24条)は社会保障を縮小させ、結社(21条)と政党(64条)で団体の解散権を国に与え、教育(26条)で国の介入が強まると警告しました。
明文改憲以前にも、安保法制によって政府が恣意的に判断し、アメリカの戦争に日本と日本国民が動員される危険性を強調。野党共闘で改憲勢力3分の2打破を訴えました。