【3月12日付】湯梨浜町で子どもの貧困問題講演会-助けてと言えない貧困世帯 深刻な実態

 湯梨浜町は2月26日、社会心理学講師の市場恵子さんと夫で小児科医の尚文さんを招いて、子どもの貧困問題で講演会を開きました。


 市場夫妻は、歌を交えて子どもの貧困の深刻さを告発しました。


 働く女性の6割が非正規雇用で、非正規で働く若い女性(15~34歳)の8割=289万人=が年収200万円未満で、子どもの貧困の背景に若い女性の低収入があると指摘。シングルマザーの平均年間就労収入は181万円で、20代では約8割が年収114万円未満の貧困状態であり、母子世帯は110万人、父子世帯は23万人で、その多くが貧困状態で仕事の掛け持ちをしているとのべました。


 夫妻は「学校給食だけが唯一の食事。長期休暇でやせて登校」という子どもの存在や〝消えた子ども〟の事例を報告しました。


 「ごみ屋敷。服を着たこともなく外出したこともない。表情筋が衰え泣くこともない」「知人宅に放置され服も臭く便座で勉強」「中学生で保護され教育を受けておらず授業で大声を出す」「無国籍で学習、発達の遅れ」「小学生でおむつ」「家から出たことがない。髪は伸び放題。言葉が話せない」などの状態で保護され、その背景にネグレクト、貧困、借金からの逃避、DV、保護者の障害、精神疾患などがあるとしました。


 路上生活、車上生活、ネグレクトの子どもについて、中学生で「コンビニで廃棄されたものを食べていた。公園やマンションの片隅で寝泊まり。体格が小さく背骨が曲がっていた」「幼い兄弟が自販機の裏で寝ていた」「ホームレスの父と野宿」「パチンコ店で拾った玉を親に渡す生活」、不登校とされていた小学生で「母親に家に置き去りにされ万引きで飢えをしのいでいた」などの例。


 保護者が精神疾患の場合、「洗濯も入浴もままならず学校で臭いと言われ、いじめられる。家はごみ屋敷」、小学生で「学校に行かせてもらえず親のリストカットを見ていた」などの例をあげました。


 保護した後も問題が残り、学習の遅れ、体の発達の遅れ、非行・犯罪、PTSDなどのトラウマ、コミュニケーション能力の低さなどがあり、「17歳で保護され漢字が書けず計算ができない」「幼児なのに自傷行為」「自殺願望があり精神科の薬がないと生活できない」「手づかみで食べる。食べたことのない食材が多く名前もほとんど知らなかった」「社会に適応できず自死」などの例をあげました。


 〝見えない貧困〟の背景について、格安スマホを使用し身ぎれいで見つかりにくい▽アルバイトで生計を支えている▽子どもが貧困を隠す―を指摘。子どもの貧困を放置すれば、貧困家庭の子どもが貧困になるなど、40兆円の所得が減少すると警告しました。


 さらに貧困家庭の抱える問題には、子どもの学力が低い▽受診でずに重症化する▽支援制度へのアクセスが難しく孤立する▽親が精神的不安定になり子どもが不登校になりやすい▽子どもの自己肯定感が低く勉強への意欲や未来への希望を失う▽高校中退で再び貧困の連鎖に入るーなどを指摘しました。


 1人親家庭の貧困率はOECD諸国中最低で、所得再分配前より所得再分配後に貧困率が上がるのは異常だと批判。自己責任社会によって「助けてと言えない貧困世帯」の現状があり、「助けられるに値する、生きるに値する人間」としての自己肯定感と他人への信頼感が必要だとのべ、社会的支援としてのフードバンク、子ども食堂、居場所づくり(子どもシェルター、自立支援ホーム)、学習支援などの取り組みを紹介しました。