鳥取市で12日、映画「日本と再生」上映会と講演会が開かれました。映画監督の河合弘之弁護士と「市民エネルギーとっとり」の手塚智子代表が講演しました。
河合監督は、映画を作ったのは自然エネルギーの真実を伝えるためだとのべました。
目的の一つは、自然エネルギーに対する「不安定でコストが高い」「ドイツは原発依存のフランスから電力を買っているから脱原発ができる」などのデマを打ち破ること。もう一つは、自然エネルギーが世界のエネルギーの主流になっていることを伝えるためだと強調しました。
その上で「自然エネルギーは、普及することで高位安定化し、コストが下がり、世界の風力と太陽光の発電設備容量は、原発の2倍になっている。ドイツはフランスから輸入する電力量の3倍をフランスに輸出している」と指摘し、東芝やアレバのように原発は、すでに斜陽産業となっており、脱原発運動は必ず勝利すると宣言しました。
河合弁護士は、自然エネルギーは10年で2倍に増えており、コストが年々下がって有利な投資先となり、もうかる事業になっているとのべました。
長年、温室効果ガス削減では、先進国と途上国が対立して、有効な条約が発効できなかったが、パリ協定(途上国も削減する)が発効(55カ国以上が批准、批准国の温室効果ガスの排出量が世界の総排出量の55%以上)できたと紹介しました。
パリ協定が発効できた背景について、「これまで湯水のように化石燃料を使ってきた先進国が、経済発展を望む途上国に対して、化石燃料の使用を抑制しようとしていることに、途上国は反発していきた。しかし、自然エネルギーのコストが下がり、安価なエネルギーとなったため、途上国で自然エネルギーを使用しての急速な経済発展が可能となったため、対立が解消された」と紹介しました。
経済発展と温暖化防止には、スピードが求められるとして、「原発は建設に20年かかるが、自然エネルギーは1年でできる」と手軽さと普及のスピードを指摘し、現代のビジネスに合っているとのべました。
パリ協定発効のもう一つの背景に中国とアメリカの参加があるとして、「自然エネルギー先進国である両国が、自然エネルギーの物資やシステムを途上国に売り込むことができるとふんだからだ」とのべ、日本の政治家や経済人が自然エネルギーに対するネガティブな考え方を改めるよう促しました。
自然エネルギーの優位性についても指摘。日本は毎年、サウジアラビアなどから25兆~30兆円の化石燃料を輸入しているが、自然エネルギーは燃料費がただであり、化石燃料を自然エネルギーに替えれば、国内経済が潤うと強調しました。一方で、化石燃料に依存して輸入し続ければ、自然エネルギーに転換している国に遅れをとり、エネルギー自給国との格差が年々開くと強調しました。
安倍政権は、原発を止めると毎年3・5兆円の損失が出ると言っているが、自然エネルギーに転換すれば、原発再稼働の7、8倍の経済効果があるとし、逆に原発を続けることで福島原発のような事故を起こすリスクが高まり、そうなったら日本は立ち直れなくなると警告しました。
福島原発事故は、4号機の核燃料プールが倒壊していたら、東日本には人が住めなくなっていた可能性があったとのべました。
脱原発、再稼働反対のたたかいは、世界の脱原発、自然エネルギーへの転換の流れからも、救国、正義の道義的理由からも、必ず勝利するたたかいであり、確信を持とうと呼びかけました。
しかし、このたたかいは自動的に勝利するものではなく、運動を広げていくことが重要だと語りました。
「原発がなくなると労働者が働く場所を失う」との声にふれ、「原発は定期点検のときに人手が必要になる。定期点検のたびに全国の原発を労働者がぐるぐる回っているのであり、地元の原発労働者はそれほど多くない」と指摘。自然エネルギーを開発することで、雇用確保は十分できるとのべました。
現在の裁判闘争の中心は、原発再稼働差し止めの仮処分の裁判だと強調。大津地裁の高浜電発の仮処分に続き、伊方原発でも広島、大分、松山、山口の4地裁で仮処分を申請したとして、「四国電力は4戦4勝しないと再稼働できないが、我々は1勝3敗でも差し止められる。再び、過酷事故が起こらないように再稼働する原発を最小限に抑え、その間に自然エネルギーを増やし、原発の立錐の余地もない社会をつくろう」と呼びかけました。
日本で自然エネルギーの普及を妨げる障害になっているのは政治だとして、国政の転換を訴え。障害を取り除けば、日本の自然エネルギーは1年ごとに倍化するだとうと予測し、「日本の潜在能力はドイツの9倍だが、ドイツの9分の1しか開発していない。ドイツ並みに開発すれば、81倍になる」とのべました。
※自然エネルギー発展の三つの壁は①電力会社の接続可能量(原発の発電量を確保)②空き容量ゼロ(電力会社の開発計画が優先)③連携負担金(容量を増設する費用)です。
7000億円の損害を出した東芝事件の背景について、「福島原発事故を機に世界中の安全基準のハードルが上がり、各国の政府が原発への安全対策のための追加工事を命じたからだ。フランスのアレバも、フランスやフィンランドの原発を最新型の原発にするために、1兆円の追加工事を命じられ、事実上の倒産(政府が出資して支えている)に追い込まれた」とのべ、世界の原発産業の斜陽化を指摘しました。
日本も安倍首相が原発行脚をしたが、台湾が脱原発し、ベトナムは受注を中止し、トルコも躊躇し、行き詰っていると話しました。
地域分散型の自然エネルギーについて、現在はインターネットで結ばれてコンピューターで制御(IOT)され、供給不足は起こらず、東芝や日立、東電や関電も実証実験に参加しているとして、将来性を示唆しました。
電力会社が原発再稼働にこだわるのは、原価償却した原発で儲けたい▽すでに支払い済みのウラン燃料を使いたい▽原発を動かさないことで生じる化石燃料代が原発1機につき、年間500億円かかる―からだとのべました。
手塚氏は、鳥取市での市民発電所の取り組みを紹介。福島原発事故をきっかけにドイツや世界が脱原発に大きく舵を切り、爆発的に自然エネルギーにシフトしているのに、当事者の日本が原発に固執していることに憤りを感じるとのべました。
さらに、ヨーロッパでは省エネが第一で、必要なエネルギーは自然エネルギーで賄い、それでも足りない分は化石燃料で賄うという発想で、原子力は時代遅れだと強調しました。