全日農鳥取県連合会の県夏季農業講座(鎌谷一也実行委員長)が8月26、27の両日、大山町で開かれました。
慶応大学経済学部の金子勝教授が「日本の農業の現状と対策」、岸田悟県農林水産部長が「県農業の中期ビジョンと政策」、コープしがの久保久生氏が「農業と消費者の接点から、食と地域の将来展望を創る」と題してそれぞれ講演しました。
金子教授は、50年周年で産業が変遷しており、今がその転換期だと指摘しました。
安倍政権は加工貿易(原料を輸入して製品をつくり、海外に売る高度経済成長の時代)の発想にしがみつき、異次元の金融緩和で円安、株高にして工業製品を売り、オリンピック、リニアモーターカー、大阪万博、原発と「いつか来た道」を繰り返そうとしているが、日銀は国債の下落(*1)を恐れて国債を買い続けることになり、国の借金は1077兆円を超えて際限なく膨らみ、戦争後のような超インフレによって貨幣価値が大幅に目減りし、経済が破綻すると警告しました。
(*1)国債が下落すれば、配当の額は変わらないので金利は上昇する。平均回収期間が8年で金利が1%上昇すると、国債は1%×8=8%下落する。日銀の国債保有残高が本年度末で500兆円になると40兆円の含み損になり、純資産額3・5兆円の日銀は超過債務になる。
金子教授は、石油文明の崩壊は始まっており、同じものを大量生産してコストを下げる時代は終わり、これからは小規模分散型の経済が主流になると指摘しました。
農業経営モデルとして地域で食料とエネルギーをつくり、自家消費し、安全、安心の価値観を都市市民と共有し、都市部に売る小規模な経済(*2)を提唱し、消費者が農家を支えることが大事だと強調ました。
全国市場を対象とする大規模農業(大規模な経済)では、広大な土地に単一の遺伝子組み換え作物を植え、外国人労働者を使い、大量の農薬と化学肥料を使い、安全、安心を犠牲にした農業になると批判しました。
(*2)消費者が農家を支える仕組みの一つに地域支援型農業(CSA)がある。CSAは、消費者が農家(家族経営や生産者のグループ)のパートナーとなり、費用を先払いして定期的に作物を受け取り、消費者が農家と共に安全、安心の価値観やリスクを共有し、農作業や出荷作業など農場運営に参加する。
久保氏は、JAと協定を結んで米・野菜の契約栽培をすすめ、植え付けや収穫への組合員の参加、飼料米配合15%のさくらたまごの普及に取り組むなどの実践を報告しました。
岸田部長は、1985年に農家数5万戸が2015年に2万7713戸に半減し、農業産出額が1100億円から697億円に半減したと報告しました。
1985年→2015年の農業産出額の内訳は、畜産329億円→265億円(29・9%→38%)、米315億円→121億円(28・9%→17・4%)、野菜167億円→201億円(15・2%→28・8%)、果実177億円→73億円(16・1%→10・5%)で、高付加価値の野菜への転換がすすんでいるとしました。
鳥取の誇る農産物について生産量全国1位のラッキョウ、白ネギ、大山ブロッコリー、大栄スイカ、梨の新甘泉、垣の輝太郎、芝、畜産物について鳥取和牛オレイン55、豚の大山ルビー、鳥取地鶏ピヨ、白バラ牛乳を紹介しました。