鳥取市青谷町勝部地区の山林所有者らを対象に林業関係者らが9月16日、兼業、家族経営、小規模を基本とする自伐型林業をめざした「勝部に仕事をつくる」と題したフォーラムを開きました。自伐型林業推進協会の中嶋健造代表が講演しました。
中嶋氏は、自伐型林業について1人で1日当たり1立法㍍切り出すことができれば、1立法㍍当たり1万5千円のスギの山林で20日間働いて300万円になるとのべました。
日本の林業の問題は、①【所有と施業の分離】林野庁が山林所有者から経営・施業を分離し、請負事業体に全面委託したことで、大規模な林業が中心となった②【50年皆伐・再造林の方針】美しい森林づくり基盤整備交付金で、50年以上の木をみんな切って植林することが全国で行われている―ことで永続的な森林経営が成り立たなくなり、素材生産業(伐採して丸太に加工して市場や製材所に運搬、森林組合・企業が施業)や再造林が補助金で成り立っているとして、採算も環境も無視の衰退産業になっていると批判しました。
伐期(間伐・皆伐の樹齢)を50年にして、若い木を早く切り出して植林するやり方は破綻しており、択伐をしながら大径木を育てる200年の森をめざすべきだと主張しました。やり方として、造林30年以降、10年ごとに2割間伐をして、伐採ごとに生産量を増加させる自伐型林業を提唱しました。
50年まではB材(集成材・合板用)、C材(チップなど燃料用)で、50年以降はA材(製材用)・超A材とB・C材の生産が可能だとしました。一方で現行の50年皆伐はB・C材が中心でA材は少ないと指摘。50年間伐をした場合でも、過間伐の現行のやり方では風倒木を増やすだけで良質な木は育たないとのべました。
良質な大径木をつくるためには、枝と枝が重なって木を支え合う、風が入らない森林にすることが大事だとして、再造林する場合でも2㌃ずつでと忠告しました。
ドイツは質の劣るトウヒの人工林だが、ほとんどが自伐型で100万人の雇用を生み、成功しているとして、北欧型のやり方で、スギ、ヒノキの人工林を高性能林業機械で大規模に伐採する現行の大規模林業は日本の森林に合わないと指摘。1作業班4人に対し、1セット1億円の高性能機械が必要となり、投資を回収するために大規模に伐採し、3㍍以上の広い作業道と補助金を得るための3割間伐で森林がスカスカになり、残された木が風で倒れたり、繊維が切れてA材にならず、森林が〝使い捨て〟にされていると批判しました。
現行林業は、作業道も1回限りの施業用のため雑な造りで壊れやすく、木が疎なため土砂崩れなど災害を起こしやすく、再造林も採算割れし(伐採収入50万円に対し経費が200万円かかる)、林業国内生産額2000億円に対し補助金が3000億円で産業として成り立っていないとのべました。
一方で自伐型林業は、幅2・5㍍以下の壊れない高密度の作業道が砂防工の役割を果たし、2割間伐でA材になる大きな木を育て、100年~200年でみると大規模林業の3~5倍の生産量になると強調しました。
自伐型は、初期投資も500万円程度ですむ(林内作業車、3㌧クラスのバックホー、2㌧トラックか軽トラなど。現行は初期投資に1億円、機械の減価償却、修理、燃料代で年間3千万円が必要)▽低ノルマ&小型機械で高密度路網のため平地での作業が多くて安全(現行は1日1人10立法㍍の高ノルマで索道集材のため危険)▽作業道敷設に補助金がかかるくらいで再造林も補助金がいらない(現行は造林、育林、間伐に高額の補助金が必要。造林面積が大きいとシカの食害、生育不良の心配)▽主業だと1人30~50㌶、副業だと1人10~30㌶の同じ山林を経営する農耕型(現行は山を次々と変えて施業する狩猟型)▽経費がかからないため採算性がよく、環境保全型で多世代に渡って経営が可能(現行は高投資・高コスト型で採算性がなく、大量生産で災害に弱く、一世代型の伐採業・素材生産業。生産過剰で値崩れを起こす可能性がある。B・C材中心で単価が安い)▽現行林業に比べて面積当たりで10倍の雇用が生まれると指摘しました。
さらに、中山間地域での農業はむずかしく、自伐型林業(キノコなどの林産物、エコツアーを含む)との兼業で生計がはかれ、地域再生の大きな力になると強調しました。
森林組合で働く男性からの質問に、中嶋氏は森林組合こそ自伐型(山守)に転換してほしいと希望しました。