鳥取市で5日、リノベーションまちづくり講演会が開かれ、建築家で北九州家守舎の島田洋平代表が講演しました。
島田氏は、都市・地域経営の本来の姿に戻り、人間中心の都市をつくることが大事だと訴えました。
まちづくりを補助金で回すのではなく、民間が稼いで税金を納め、公共サービスが提供されるというサイクルに戻すことが自然のあり方だとのべました。
補助金で回そうとすると、事業者が自立する力を失い、補助金が切れると事業が終了し、前にすすまないと指摘しました。
さらに、補助金を受けた事業で儲けることはできないとされ、次に続かないとのべ、制度融資や地元の金融機関を利用して商売として成り立つことが大事だと強調しました。
これまでは、人口が増え経済が成長し、どんどん供給すれば売れたが、2010年をピークに人口減少社会に転じ、経済が右肩上がりの時代に通用したやり方が破綻しているとのべました。
人口減少、経済縮小し、財政縮小の地方都市では、右肩下がりの時代にふさわしいやり方があると話しました。
ピーク時には年間190万戸あった住宅(戸建て)の新築が、80万戸まで減少し、空き家が増えているとのべました。
空き家、空き店舗、空きビルが増えているということは、供給過剰になっているということであり、使われなくなった建物を壊して新築するという従来のやり方では、供給を増やすだけで〝空き家問題〟や〝地域の再生〟は解決しないと指摘しました。
〝空き家〟という空間資源のストックがあり余っているということであり、これらの遊休不動産の有効活用こそ必要だとして、壊して建てる再開発、大型集客施設をつくって活性化しようとする試みは失敗するとのべました。
今あるストック(空き屋、空き店舗、空きビル)を活用して使い方を変えて(改築しなくても用途変更するのもリノベーション)、雇用と産業を生み出し、エイリアの価値を高めることが大事だとのべました。
今ある1742の自治体のうち、896自治体は自主財源で義務的経費を賄えず、補助金を積み立てた基金の取り崩しができないとすれば、1200自治体、全体の3分の2の自治体が自立できず、国の交付税や補助金に頼っていると紹介しました。
自主財源(住民税や固定資産税、地方消費税、法人住民税など)は、少子高齢化、生産年齢人口の減少と流出、人口の減少、子育て世代の流出、地場産業の衰退などで縮小し、地方交付税も縮小していくとのべました。
地方は、自主財源が年々減少し、中心市街地の衰退、商店街の衰退、遊休不動産の増大など、地域経済の疲弊とコミュニティーの崩壊がすすみ、一方で医療、介護、生活保護などの社会保障費は増大し、公共施設の更新経費は増大し、義務的経費は年々増え、財政破綻に直面していると指摘しました。
支出は増え、収入は減るなかで、都市・地域経営のあり方をどう変えるのかと問題提起し、リノベーションまちづくりを提唱しました。
行政主導型から民間主導(不動産オーナー、民間自立型まちづくり会社=家守〈※〉、ビジネスオーナー、市民など)に切り替えて、行政は支援に徹し、空間資源と潜在資源を結び付けて、経済合理性の高いプロジェクトを起し、地域を活性化することが大事だとのべました。
※ 家守は、不動産オーナーから物件を賃料(5年間分とか)を払って借りて改修し、ビジネスオーナーから月々、家賃と改修費をもらう。
従来のやり方で作った「まちづくりのマスタープラン」は、〝絵に描いたもち〟になり、構想と実現の間に大きな断絶があると指摘しました。
それは、メンバーが発言に責任のないお客様市民、評論だけで行動しない学者、補助金でやる事業者などで構成され、行動しない人がつくったプランだからだとして、「志のある不動産オーナー、家守、やる気のある行動する学者、自立し成熟した事業者、市民など、行動する人がメンバーとなってプランをつくることが大事だ」と強調しました。
さらに、従来のプランは実現するプロセスもゴール(何のためにするか目標)の設定もないと批判。リノベーションスクールを開き、不動産オーナーと事業者、家守、市民が実在の物件のリノベーションプロジェクト(事業計画)をつくり出し、目標を設定し(解決の必要な課題、プロジェクト、雇用、新規起業、歩行者、定住人口、民間投資の増加、路線価上昇など)、プロジェクトを動かすことが必要だとのべました。
行政は、リノベーションまちづくりを担う人材を育て、ネットワーク化するためのリノベーションスクールを開き、最初のプロジェクトを実現するまでが仕事で、あとは民間に任せることだと話しました。(つづく)