【3月4日付】鳥取環境大学で公開講座 自然エネルギーで経済循環を

 鳥取環境大学で1月22日、公開講座が開かれ県地球温暖化防止活動推進センターの山本ルリコ副所長が「地域経済の好循環と持続可能なエネルギー選択」と題して講演しました。


 パリ協定(2016年11月発効)では、今世紀末までの気温上昇を1・5度~2・0度に抑えるために各国が30年までの温室効果ガス(CO2)の削減目標を定め、日本は13年比で26%(EUは各国40%以上)を決めています。特に家庭部門では40%の削減が求められています。


 山本氏は、世界がいま脱炭素社会に向かっていると強調。産業革命から今日までの140年間くらいで地球の気温が1度上昇しており、以下の問題を抑えるためにもCO2の排出削減は急務だとのべました。


 【海面上昇】2050年には海面が最大40㌢上昇、フィージー諸島が移民計画をすすめている。大陸である南極とグリーンランドの氷が溶けている。1秒間に25㍍プール分の氷が溶けている。日本も多くの平野部が水没する。


 【異常気象】集中豪雨・雪などによる甚大な被害、天候不順による水、食料不足。紛争の勃発。膨大な財政支出と経済的損失。


 【生態系の破壊】CO2を吸収する海の酸性化でサンゴ礁が消失し、貝類が大きくならない。9割近くの魚がサンゴ礁で生まれ、育っており、卵を産む場所が喪失する。人類は海洋資源を失う。


 山本氏は、CO2を出さない商品(企業)、サービス、住まい、暮らし方が大事だと強調。光熱費を減らして燃費のいい暮らしをと呼びかけ、以下の提案をしました。


 【住宅の断熱】家庭のエネルギー消費は暖房、給湯が半分以上。冷房は2~3%。窓を2重窓にして断熱し、室温を20度に保つ。入浴時のヒートショック(急激な温度の変化による血圧の乱高下。心筋梗塞、脳梗塞などになる)による年間死亡者数は1万7千人で交通事故の3・7倍。ヒートショックを避け、要介護になる人を減らす。


 【省エネの家電】エアコン、冷蔵庫などを消費電力の少ないものに換える。


 【自動車の使用を減らす】30分圏内の都市計画は公共交通で網羅できるものにする。1日500円乗り放題券など(ドイツ)を発行する。


 ドイツでは、1980年~1990年代に郊外店に自家用車で買い物に行く生活スタイルが増え、商店街から店が消えた。一方で都市の中心市街地は車で溢れ、人が住みにくくなっていた。そこで、商店街に車を入れない政策(無料か格安の駐車場から公共交通で移動。歩行者空間にする)を取った。


 車を規制すると客が来なくなるという声もあったが、実際は街中を歩く人の1人当たりの購入金額が増え、観光客が増えた。集合住宅をつくり、車がなくても街中だけで暮らせるようにした。オシャレな人が増え、カフェが増えた。


 【地域エネルギーを増やし化石燃料の輸入を減らす】日本は化石燃料の輸入で年間21兆円を海外に流出させている。地域で自然エネルギーをつくり、経済循環でお金を地域外に流出させない。


 ドイツのヒッテサウ村では、森林資源を使ってボイラーでチップやペレットを燃やし暖房、給湯に使い、排熱でエネルギーをつくっている。


 北栄町では風力発電の収入から年間5千万円を一般会計に繰り入れている。