鳥取市で8日、リノベーションまちづくり講演会が開かれ、各地でまちづくりを手掛ける清水義次氏が講演しました。(以下講演要旨)
2010年から始めたリノベまちづくりプロジェクトでは、小倉家守構想検討委員会の10人の委員に3人の志のある不動産オーナーを選定しました。
不動産オーナーの1人が手をあげて木造2階建ての空きビル(73坪)のリノベーションが決まりました。ビル「メルカトール三番街」には10店舗(照明デザイナー、美容院、ハンドメード雑貨、食堂、地域新聞など)が入りました。
また、空きビルだった中屋ビル2階には「ポポラート三番街」(4階にフォルム三番街、1階にピッコロ三番街)ができ、ハンドメードの作家(家具、雑貨、アクセサリー、服飾、アートなど)40人のアトリエ&ショップが入りました。
都市型産業であるアート&クラフトの作家を40人(今では70人)囲い組みました。
メルカトールに10店舗できたときは、地元の人は物づくりをしている人は出尽くしたと思っていました。しかし、潜在的には家庭に女性たちが眠っていました。
お客がいなくても、35人以上の集団がいたら、そこに賑わいが生まれます。人は賑わいが好きです。コミュニケーションに飢えています。リノベーションすればカフェができる廃屋は宝です。
サンロード魚町のアーケード撤去に伴い、100㍍の路地を区役所が公園道路にしました。民間にはできないことです。その公園道路の管理を家守会社に委託し、夜の賑わいが生まれています。道路という公共施設を歩行者天国にして、営業空間に変えて店の売り上げが倍に伸びています。公民連携で官と民が一体となってエリアの価値を高めています。
縮退傾向にある中心市街地、商店街の再生は商店の再生ではありません。小売型の商店は粗利が薄くて厳しい。消費型から生産型へ変えることです。コミュニケーションへの欲求を満たす、製造、販売業である飲食店は粗利も稼げ、うってつけです。ニーズにかなったものを提供すれば、人も来て商店街は再生します。
市役所の役割は、公共空間、公共施設を活用して大きなリノベーションまちづくりをすることです。
鳥取市でも公共施設の縮減が課題になっています。公共施設を維持・更新するお金がないため、3割削減が計画されています。
公共建築物、市道、橋梁、公共施設、上下水道、公園の更新費用に50年間で毎年220億円かかるが、124億円の予算しかない。年に100億円分を減らす必要がある。
公共施設の縮減、長寿命化、建て替える際に廃止、機能統合するなどのことが言われますが、あまり減らさずにうまく利用して維持する方法はないか。
岩手県紫波町のオガールプロジェクトの話をします。
町は10年間、塩漬けされていた10・1㌶の土地に庁舎と図書館を建てて、人を呼び込み、まちの中心にしたいと考えたが、財政が悪化してできませんでした。
そこを公民連携で構想を練り、図書館の入ったオガールプラザに民間のテナントを入れ、賃料を充てて図書館の維持・管理費をゼロにし▽図書館ロビーは飲食自由にしてマルシェの会場として貸し、図書館も料理のレシピ本を置いて農業を支援し▽9の産直をつないで回遊させ、全体で売り上げを伸ばし、農家の息子が戻り始めています。図書館の下は地産地消の居酒屋が入っています。
公共施設単体よりも民間宿泊施設など、民間と合体することで収益を上げ、施設の機能を高めることができます。
定員150人の保育所と病児院を併設し、病児保育を可能にして母親が安心して預けられるようにし、30㍍×300㍍のオガール広場はいつでも人で賑わっています。5日間開かれるオガール祭りはA級料理を揃え、県外からも来ます。
整備した分譲地には日本一のエコハウスが建てられ、エコハウスの普及が地場産業となり、工務店が潤っています。17の工務店が組合をつくって建設しています。
住宅を建てる場合は、トリプルガラスなどによる断熱性能の確保など厳しい条件が課せられています。年間1万7000人が死亡するヒートショックを防ぐ健康住宅で、医療費も節約できます。
町産材が活用され、端材はプラントで熱源として使用され、(熱水による熱交換で)家庭に熱が供給され、暖房と給湯に使われています。
エコハウスの普及・建設という地場産業が生まれ、脱炭素社会を推進し、燃料代を3分の1に節約し、林業にも貢献しています。所得の高い層が移住して来て税収が上がっています。
残念ながら、庁舎の建設は民間任せのPFIでやったため、無駄な建設費がかかりました。大断面集成材と高価な金物を使用し、共用部が40%を占める大きな建物になりました。
オガールの方は、PPP(官民パートナーシップ)で中断面集成材を使用し、共用部がオガール広場のみの14%と小さく、坪単価38万円というローコストでできました。
(終わり)