北栄町で2月17日、健康・省エネ住宅を推進する国民会議の講演会がありました。
同会は、住宅の断熱化(断熱住宅の普及)で、先進国の中で著しく耐熱性能が劣った日本の住宅がもたらす、ヒートショック(※)による死亡や健康被害を大幅に減少させ、また、結露によるカビなどを抑制することでアレルギーを軽減し、医療・介護の社会的費用負担を軽減し、同時に、冷暖房によるエネルギー・化石燃料を節約し、省エネ・脱炭素化による地球温暖化対策を推進することを目的としています。
※ 冬場に暖房の効いた部屋から風呂に入るために脱衣するとき、冷気によって血管が収縮し血圧が急上昇、湯船の熱湯によってさらに血圧が上昇、その後、体温が上昇して血管が拡張し、血圧が急降下、これによって失神、溺死、転倒の危険があるほか、血圧の乱高下によって心筋梗塞、脳梗塞、脳卒中、不整脈が起きて突然死したり、障害を負う危険がある。冬場のトイレ、寝室もリスクがある。
医師の石原新菜氏とさいたま健康・省エネ住宅推進協議会会員・建築士の清水雅彦氏が講演しました。
清水氏は、浴室関連での死亡は年間推計1万7000人(2017年の医師による死亡確認は5941人)で交通事故(同年の死亡は3694人)の何倍もあると指摘しました。
部屋間の温度差のリスクについて、冬の死亡増加率が栃木25%、茨城24%と特に冬寒い地域、静岡、愛媛、鹿児島21~22%と温暖な地域が高く、北海道、青森10~11%と寒冷な地域が低いのは、断熱住宅の普及のちがいだ(温暖な地域は少なく、寒冷な地域は多い)と指摘しました。
断熱不足の家、低室温のリスクについて、「室温が低いと体が冷えて病気になりやすい。病原体やガンとたたかうナチュラルキラー細胞は体温36・5~37度、血栓を溶かす酵素は37~38度で活発に働く。体温が1度上がると免疫力は数倍になる。沖縄のガン罹患率が特に低いのは温かいところで寝ているのが一因ではないか」として、体を温めることを推奨しました。
室温について「断熱基準がないのは日本がけ。16度以下は危ない。英国では最低室温も許容温度が18度で、基準を満たさない賃貸住宅は、住宅法で大家に対して改修・閉鎖・解体命令が下される。米国でも州ごとに、大家は居住者の室温を20度以上にしなければならないなどの法律がある」と紹介しました。
近畿大学の岩前篤教授の高断熱高気密住宅に引っ越した人を含む約3万5千人を対象にした調査を紹介し、「断熱効果が高い住宅ほど、気管支ぜんそく、アトピー、関節炎、アレルギー性鼻炎など15の疾患で改善率が高くなっている」と強調。断熱住宅にするための費用は、省エネに加えて医療費の節約も考慮すれば16年で回収できるとのべました。
石原氏は、食べ過ぎと低体温の病気への影響を指摘しました。
食べ過ぎネズミの発がん実験(放射線をネズミにあてる実験で満腹ネズミは100%ガン化、腹5分目空腹ネズミは0・7%のガン化)などを紹介。摂取カロリーを抑えると、老廃物(血糖値が高いとできる終末糖化産物など)が減少し、それを取り込む白血球の仕事が減り、白血球の働きがよくなる▽細胞分裂が遅くなり、老化を遅らせる▽血糖値を下げるインスリンが出る▽オートファジー(自食作用)が活性化する▽長寿命遺伝子が働く(酵素の働きでエネルギーを産生するミトコンドリアが増える)―と説明しました。
現代人は運動不足で筋肉量が減り、足腰が弱り、戦後と比べて体温が1度低下。基礎代謝が約12%落ちて、カロリーを消費できなくなり、血流が悪くなり、糖尿病・高脂血症・肥満・高血圧になりやすく、ガン細胞が増殖しやすい体質(低温、低酸素、酸性)になっているとのべました。
冷えを改善するためには、運動して筋肉をつけ、体温(基礎代謝)を上げ、体を温めること(ショウガ効果、運動・入浴、室温管理、腹巻など)だと強調しました。