斉藤教授は言います。
家族(親)がやってしまうのは、本人を理解できず、打開策がわからないため、「本人を批判・叱咤激励する」「世間体を気にして社会から隠す」などの対応です。
「息子は高校の入学式のみ登校し、後は全く行かなくなりました。夫は育てている私のせいだと言いました。…事態は変化せず、学校に行くように言うとひどく怒りました」(40代母親)のように、親が自分自身を責めたり、地域から孤立し、毎日対応に追われる日々が数年以上、長いと10年程続きます。
「息子は40歳を過ぎており、東京で大学を出て就職しましたが、27歳のときやめて帰ってきて、ひきこもって15年経ちます」という70代の母親は、「親の会」を知り、3年間迷った後、代表のAさんに電話。その時の気持ちを「とてもほっとしたし、うれしかった」とのべ、「今は子どもも楽だと思う」と話しました。
ひきこもり「親の会」に参加したことがターニングポイントとなり、①気持の立て直し②新たな価値観で子どもに関わる努力—が始まります。
「手の打ちようがない」状態になり、迷った挙句に「親の会」につながり、同じような経験を持った親たちと出会い、孤独感から解放され、希望が持てるようになります。
自信がなく、胸のつぶれる孤独感、自責感、不安感、批判的言動から解放され、子どもに向き合う勇気を持つことができるようになります。
斉藤教授は「まず、親自身が受け止められ、様々な感情から解放されることが必要です。親の居場所が必要です」と強調しました。
次に、▽体験を語ったり、聴くこと▽正しい知識を得ること—で子どもに向き合うことができるようになります。
生物学的要因と心理社会的要因が混在化し(発達障害や精神疾患、不登校、失職など)、家族とのコミュニケーションが断絶することで、子どもの総合的理解が困難になっています。
それに対して、受容される体験から勇気を得て問題と向き合う→体験を語り聴く→正しい知識を得る→体験を理解する→全体像が見えてくる→新たな価値観へと認識が変化します。
「親の会」からエネルギーをもらって、理性と感情との葛藤を抱える力を得て、伴走者として関わる決意をし、子どもを受容し、全体像が見えてくると、「子どもは勉強するもの、仕事をして給与をもらうもの」という親の価値観から、「この子が苦しんでいることがわかった」と子どもの価値観(新たな価値観)に立つことができます。
親が心の安定を取り戻し、ゆとりを持つと「いつ学校(職場)に行くのか」と子どもを追い詰める言動がやみ、「ここ(家庭)に居ていいんだ」と、家族が子どもの居場所になり、「一緒に食べるようになった」「おはようと声を出すようになった」と、子どもが変化します。