TPP(環太平洋連携協定)・農協「改革」に反対する鳥取県西部総決起集会が10日、米子市のJA鳥取西部で開かれ、約230人が参加しました。全日農県連会長で県畜産農協組合長の鎌谷一也氏が実行委員長、日本共産党の錦織陽子県議が副実行委員長、民進党の森雅幹県議が事務局長を務めました。
鈴木宣弘東京大学教授が基調講演し、鎌谷氏、大山乳業農協の幅田信一郎組合長、JA鳥取西部の植田秋博専務、農業法人の長谷川正社長、県保険医協会の小田島耕郎事務局長、新日本婦人の会境港支部の小村真利子支部長が発言しました。
政党を代表して日本共産党の福住ひでゆき衆院2区候補、民進党県連の湯原俊二副代表・元衆院議員、社民党県連の松本煕副代表が登壇し、湯原氏が決意表明しました。
鈴木教授は、安倍政権のTPP批准はTPPの水準を国際公約するもので、米国やEUとの協議でそれを超える譲歩を迫られると警告しました。
現状でも日本で禁止されている収穫後農薬、遺伝子組み換え食品、成長ホルモン使用牛肉・乳製品が輸入されており、TPPや二国間交渉で大幅に規制緩和されるとして、「米国は〝科学主義〟を振りかざし、安全でないことを証明できないものは、国際基準を飲まされる。人の命や環境より企業の利益が優先される。安い輸入農産物で健康を害しては、かえって高くつく。消費者として地元の農産物を買って農家を支え、安全、安心な日本の農産物と農業を守ろう」と呼びかけました。
米国のコメは60㌔につき8000円の補助金を出して4000円で打っているとのべ、農家所得に占める補助金の割合は、仏、英が90%、スイスは100%だと紹介しました。
日本の農業は、2005年は15・6%で今は4割弱だとのべ、日本の農産物市場は20年間で40兆円から80兆円に拡大したが、生産者の取り分は3割から1割に減ったと指摘。「西欧諸国は命や環境を支える産業を国民全体で支えるのは当たり前だと考えて、税金で支えている。日本の農業は過保護ではない。カナダ国民は、危険な成長ホルモン使用の米国産牛乳を飲まなくてすむとして、1㍑300円の国産牛乳を買っている」と話しました。
農協「改革」について「米国は郵政の次ぎに農協マネー150億円を狙っている。共同販売、共同購入をやめさせ、相互扶助の協同組合をやめさせ、資材を高く売りつけ、農産物を安く買いたたきたい。農協をつぶすまで攻撃をやめない」として、徹底抗戦を呼びかけました。
大山乳業農協の幅田信一郎組合長は、指定生乳生産者団体への規制改革推進会議の攻撃を告発しました。
指定団体は、酪農家から生乳の販売委託を受け乳業メーカーと価格交渉します。生乳の販売先を調整して廃棄が出ないようにしたり、過剰時の生産調整をします。過剰時の生産調整で加工用に回される生乳は、生乳より価格が安くなるため、リスク負担への補てんとして、生産者(加工原料乳生産者)に指定団体を通じて国庫から補給金を交付します。
総理の諮問機関である規制改革推進会議は、この指定団体に対して▽廃止▽全量委託から部分委託へ▽指定団体に加入しない自由取引農家へも補給金を交付―などの改革を提言しています。
幅田組合長は、酪農家の97%が指定団体に加入しているとして、部分委託にしたり、未加入に給付金を交付することは、指定団体を解体へ導くことだと批判。「そんなことをすれば、すべての酪農家が小売や乳業メーカーに買いたたかれることになる」と反対しました。
幅田組合長は酪農の現状について生産基盤の弱体化を指摘しました。酪農家戸数は前年比700戸減の1万7000戸。飼養頭数は前年比2万6000頭減の134万5000頭です。
「エサ代が高騰したが、小売の力が強く乳価を上げることができなかった。先行き不安でやめていく農家が後をたたない。(需要、価格の面で生乳が優先されるため)バター、脱脂粉乳を3年間追加輸入することになった」とのべました。
さらに「乳製品は貿易量が少なく、輸入に頼ることはできない。世界の消費が増えると国際価格が高騰する。国内の必要量をカバーできなくなる」と指摘しました。
現在のクラスター事業への国の支援に加え、自給飼料への直接支払いなど国産の牛乳を守るしくみをつくってほしいと訴えました。また、消費者がカナダ(1㍑300円)のように生産者を守る取り組みを期待しました。
日本共産党の塚田なるゆき衆院鳥取1区候補と岩永尚之党県書記長は11月29日、鳥取市の鳥取県畜産農業協同組合を訪れ、TPP(環太平洋連携協定)や農協「改革」で鎌谷一也組合長と懇談しました。農民運動鳥取県連合会の今本潔代表も同席しました。
塚田候補は、11月6日のTPP反対集会・デモに引き続き、12月10日に米子市でも集会・デモが取り組まれると紹介して、「今後も農業を守るために共同しましょう」とあいさつしました。
鎌谷組合長は、農協は元より消費生協や連合婦人会にも呼びかけたいと答え、「食の安全にかかわる問題であり、消費者の運動が重要です」とのべました。
さらに、「今の農政では米価が暴落し農地の価格が下落し、兼業農家が農地を手放してしまう。米国が今後、二国間協議で農地の明け渡しを求めてくる。さしあたり、大手小売や商社が条件のいい農地を買い取るでしょう。農林中央金庫や全農が株式会社になれば、外資が株を支配する」と危惧しました。
鎌谷組合長は農事組合法人・八頭船岡農場理事でもあり、水田を守ることで農業と農村を守ることが大事だと強調。「耕作放棄地対策もですが、水田を守るための防衛策です。生産調整で米価維持が重要です」と話しました。
日本共産党鳥取県委員会と東・中部地区委員会は10日、JR鳥取駅北口で衆院でのTPP(環太平洋連携協定)承認案と関連法案の強行採決に抗議し、宣伝しました。
塚田なるゆき衆院1区候補は、TPP撤退を公約したトランプ氏が米大統領選で当選したことをあげ、「TPPはアメリカが批准しなければ発効しない。日本が批准を急ぐ道理はない」と強調。国会に情報を隠し、農産物の関税撤廃、食の安全軽視、高い薬価による公的医療制度の崩壊、多国籍企業優遇のISDS条項など、国民の不安に応える一切の答弁がないまま、採決を強行したことは許されないと訴えました。
市谷知子県議は、暴言を重ねた山本有二農水相らの議会制民主主義破壊の暴挙は許されないと批判。農産物重要5項目を除外するとした国会決議違反を指摘し、参院で徹底審議し、廃案に追い込もうと呼びかけました。
鳥取市で6日、TPP反対集会が開かれ、東京大学の鈴木宣弘教授が講演しました。
鈴木教授は、米国では「TPPで賃金は下がり、雇用は減るということが明らかにった。NAFTA(北米自由貿易協定)により500万人が製造業で雇用を失った。労働者よりグローバル企業の利益優先だ」と、反対世論が大きくなっていると指摘しました。
TPPでは、新薬データの保存期間の長期化を求める米国製薬会社のために、ジェネリックが使えない国民は命や健康、安全が担保できなくなり、中央社会保険医療協議会の薬価専門部会の委員に米国製薬業界の代表が選任され、日本の薬価の公定価格が高騰し、国民皆保険が崩壊する危険があるとのべました。
米国は「日本が科学的根拠に基づかない国際基準以上の厳しい基準を採用している」として「日本に科学的証明」を求め、「できないなら国際基準に合わせよ」と恐喝し、BSEのフリーパス、遺伝子組み換え食品(GM)の非表示、薬物の残留基準の緩和を主張。
日本の全農グリーンは、非GM穀物を分別して管理、輸送しているが、米国は日本の輸入農産物の成長ホルモン、成長促進剤(ラクトパミン)、除草剤(グリホサート)の残留、収穫後農薬(イマザリン)、GMの基準緩和を求めており、食の安全が失われると強調しました。
牛肥育のための成長ホルモン(エストロゲン)は発がん性があり、ヨーロッパでは輸入の禁止で乳がん死亡率が大きく減少したが、日本は輸入許可。ラクトパミンは、ヨーロッパや中国、ロシアでも輸入禁止だが、日本は輸入許可。米国では、乳牛用の遺伝子組み換え牛成長ホルモンが許可されて数年で、乳がん発生率が7倍、前立腺がん発生率が4倍との論文があると指摘しました。食品表示、安全基準、地産地消もISDS訴訟で崩される危険があると強調しました。